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許可更新制とは?運送業が2028年までに整える許可維持の体制

法規制経営戦略

運送業では2024年以降、制度対応が続いています。一定規模以上の荷主企業に物流統括管理者(CLO)の選任を求める改正物流効率化法、元請が実際に運んだ事業者名や委託の階層を記録する実運送体制管理簿、荷待ち・荷役時間の記録義務。いずれも「日々の業務をどう記録するか」を問う制度でした。そのうえで、事業の前提そのものを変える改正が控えています。一般貨物自動車運送事業の許可を、5年ごとの更新制に切り替える「許可更新制」です。

「許可は一度取ればそれで終わり」という感覚を持っている経営者の方は少なくないと思いますが、この前提は近く変わります。特に、開業から何年も経過し、日々の業務に追われる中で許可の存在を意識する機会が少なくなっていた会社ほど、今回の動きは他人事ではありません。本記事では、現時点で分かっている制度の内容と、運送会社が今から整えておくべき体制を解説します。

許可更新制とは何か

現在の一般貨物自動車運送事業の許可は、一度取得すれば、法令違反などの欠格事由に該当しない限り、原則として無期限に有効なものとして扱われています。開業時にきちんと許可を取得してしまえば、その後は特段の手続きをしなくても事業を続けられる、いわば「取得したら終わり」の制度でした。

これに対して導入が決まった許可更新制は、許可に有効期間を設け、一定の周期で更新審査を受ける仕組みです。改正法の条文では、更新の周期は5年と定められており、更新を受けなければ期間の経過によって許可はその効力を失います。自動車の運転免許のように、定期的なタイミングで「この事業者は引き続き許可を持つにふさわしいか」が確認されるイメージを持つと分かりやすいでしょう。一度取得すれば安泰という前提が崩れ、許可を維持し続けること自体が、経営上の継続的な取り組みになっていきます。

運転免許に置き換えて考えると、免許は一度取得しても、違反や事故を重ねていれば更新のたびに扱いが変わり、最悪の場合は更新自体が認められなくなります。許可更新制も同様に、「無事故無違反なら形式的に更新される」というだけでなく、日頃の経営姿勢そのものが問われる仕組みになっていくと考えられます。

なぜ許可更新制が導入されるのか

法令違反事業者を退出させる仕組みが足りなかった

これまでの許可制度では、一度許可を得た事業者が法令違反を繰り返していても、よほど重大な事案でない限り、許可の取消しにまでは至らないケースが少なくありませんでした。更新制を導入することで、定期的に事業者の状況を確認し、問題のある事業者に退出を促しやすくする狙いがあります。

一連の制度改正の実効性を高めるため

実運送体制管理簿の作成義務、多重下請け構造の是正、荷待ち・荷役時間の記録義務など、近年次々と導入されている制度は、いずれも「守られているかどうかを継続的に確認する仕組み」があってこそ実効性を持ちます。許可更新制は、これらの制度への対応状況を定期的にチェックする機会としても機能すると考えられます。

業界全体の健全化と信頼性向上のため

運送業の担い手不足が深刻化する中、法令を遵守し適正な経営を行っている事業者が正当に評価される業界構造を作ることは、荷主からの信頼向上にも、ドライバーの人材確保にもつながります。荷主から選ばれる運送会社の条件が変わりつつある流れの中に、許可更新制も位置づけられます。

施行までのスケジュールと現時点で決まっていること

許可更新制は、2025年6月11日に公布された「トラック適正化二法」(貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律ほか)に盛り込まれた措置です。つまり、導入するかどうかはすでに決着しており、残っているのは「いつ、どういう手続きで」という運用の詰めの部分です。

施行期日は公布から3年以内とされているため、遅くとも2028年6月までに施行される見込みです。現時点の情報では、更新申請の様式や添付書類、審査で何をどこまで確認するのかといった具体的な基準は、まだ公表されていません。ただし、既存の事業者に対する経過措置は、改正法の附則にすでに置かれています。施行日時点で許可を持っている事業者は新しい制度のもとで許可を受けたものとみなされ、最初の更新までには施行から一定期間の猶予が設けられる仕組みです。このため、既存事業者の更新申請が本格化するのは2030年以降になる見通しです。細かな期限の区切りは国土交通省令で定められるため、施行が近づいたら公式情報で確認してください。

同じ二法には、国土交通大臣が定める「適正原価」を継続して下回る運賃で運送を引き受けること、および他の事業者に運送を委託することを制限する措置も含まれており、こちらも公布から3年以内の施行とされています。一方、再委託の回数を2回までとする努力義務や、違法な白ナンバートラックの利用に対する荷主等への規制強化、貨物利用運送事業者への書面交付義務・実運送体制管理簿の対象拡大は、2026年4月1日にすでに施行されています。許可更新制は単独の制度ではなく、こうした一連の適正化措置とセットで動いている、という理解が実務上は重要です。

現在 2025年6月 2026年8月 2028年6月まで 2030年以降 改正法が公布され更新制の導入が決定 準備期間。法令遵守と記録の体制を整える 許可更新制が施行(5年ごとの更新) 経過措置を経て更新申請が本格化
図1:許可更新制の施行までの流れ(現時点の情報にもとづく見通し)

更新審査で確認されると想定される主な項目

更新審査の細かな基準は今後の詳細発表を待つ必要がありますが、国土交通省の資料では、輸送の安全確保・社会保険料の納付・適正原価の収受をはじめ「法令の規定を遵守しない場合は、事業許可の更新がなされない」と示されています。ここから想定される確認項目としては、次のようなものが挙げられます。

確認項目内容の例
法令遵守の状況労働時間の管理、点呼記録、社会保険の加入状況など
安全管理体制事故の実績、運行管理者の選任状況など
経営・取引の適正性適正な運賃の収受、再委託の階層の適正さなど
帳票・記録の整備状況実運送体制管理簿や各種記録の作成・保存状況

これらの項目を見ると、ここ数年で義務化されてきた一連の制度対応と重なる部分が多いことに気づかれるのではないでしょうか。逆に言えば、いま義務化されている記録や体制にきちんと対応できている会社ほど、許可更新制が始まった際にもスムーズに更新審査を乗り越えられる可能性が高いということです。新しい負担が上乗せされるというより、すでに求められていることを証拠として示せるかが問われる、と捉えるほうが実態に近いと考えられます。

運送会社が今から準備すべきこと

日常的な法令遵守の徹底とエビデンスの整備

更新審査では、日頃からの法令遵守の実態が問われることになります。点呼記録や労働時間の管理など、日常業務の中で発生する記録を、後から振り返って確認できる形で残しておくことが基本です。「やっているつもり」ではなく、「証拠として提示できる」状態を作っておくことが重要になります。とりわけ労働時間は、2024年4月から時間外労働の上限が年960時間に規制されており、2024年問題への対応の記録がそのまま更新審査の材料にもなります。

帳票・記録の一元管理体制の構築

実運送体制管理簿や、荷待ち・荷役時間の記録など、義務化が進む各種帳票類をバラバラに管理していては、いざ更新審査の際に迅速な提示が難しくなります。必要な記録をいつでも一元的に取り出せる体制を、今のうちから整えておくことをおすすめします。大がかりなシステムを入れなくても、コストゼロから始める物流DXの考え方で、紙と手作業の部分から順に置き換えていけば十分に前進できます。

経営体制・取引構造の見直し

不適正な取引条件を放置したままでは、更新審査において経営の適正性を疑われるリスクがあります。2026年4月から再委託の回数を2回までとする努力義務が課されたことも踏まえ、自社が多重下請け構造のどの位置にいるのかを点検し、必要であれば見直しを進めておくことが、将来の更新審査への備えになります。特定の元請への依存度が高い場合は、協力会社ネットワークの構築によって取引先の幅を広げておくことも、取引構造の健全化につながります。

010203 法令遵守の徹底と証跡化 帳票・記録の一元管理 経営・取引構造の適正化 点呼記録・労働時間の記録を証拠として残す 管理簿や記録をいつでも取り出せる形にする 再委託の回数や運賃を点検し見直す
図2:許可更新制に備えて今から準備すべき3つのこと

準備にかかるコストと資金繰りへの備え

体制づくりは、多くの場合お金の話とセットになります。記録のデジタル化に伴うツールの導入費、労務管理や社会保険の適正化に伴う法定福利費の増加、運行管理者の確保・教育、そして取引構造を見直す過程で一時的に採算の低い案件を手放す判断。いずれも、支出が先に立ち、効果が数字に表れるまでには時間がかかるという共通点があります。

ここで押さえておきたいのは、こうした準備の費用と、日々の運転資金を同じ財布で回さないことです。体制整備のようなまとまった投資には、金利の低い銀行融資が本来向いています。だからこそ、銀行融資枠は温存しておき、日常の運転資金は入金サイトの調整で吸収する、という使い分けが効いてきます。

もう一つの土台が原価計算です。適正原価を下回る運賃の制限が施行されれば、自社の原価を数字で説明できることは、更新審査への備えであると同時に、荷主との運賃交渉の武器にもなります。運送業の原価計算にまだ着手していない場合は、記録体制の整備と並行して進める価値が十分にあります。

対応を怠った場合のリスク

許可更新制のもとでは、更新審査を通過できなければ許可そのものが失効し、事業を継続できなくなる可能性があります。これは単なる行政指導にとどまらず、事業の存続そのものに関わるリスクです。長年築いてきた取引先との関係やドライバーの雇用にも直接影響するため、「知らなかった」「準備が間に合わなかった」では済まされない事態になりかねません。

また、更新審査が近づいてから慌てて対応しようとしても、日頃の記録が整っていなければ、短期間で挽回することは容易ではありません。記録は過去に遡って作れないという性質があるからです。制度の詳細が固まる前の今だからこそ、時間的な余裕を持って準備を進められるという点を意識しておく必要があります。

許可更新制を前向きに捉えるメリット

一見すると負担の大きい制度に思えるかもしれませんが、視点を変えれば、日頃からきちんと法令を遵守し、適正な経営を行っている会社にとっては、自社の優位性を示す機会にもなり得ます。更新審査をスムーズにクリアできる体制を整えている会社は、荷主から見ても信頼できる取引先として選ばれやすくなるはずです。

業界全体で問題のある事業者の退出が進めば、相対的に、まじめに事業を続けてきた運送会社の存在価値はより際立つことになります。荷主企業の側でも、CLOの選任などを通じて取引先の選定基準がより厳格になっていくことが予想されます。「許可更新制のもとで安定的に事業を続けている運送会社」という実績は、そうした荷主の目線から見ても分かりやすい安心材料になります。さらに、記録体制を整える過程で蓄積される取引データは、更新審査の材料であると同時に、資金調達の場面で自社の信用力を示す材料にもなります。守りのために整えた体制が、攻めの材料に転じる余地があるということです。

まとめ

許可更新制は、2025年6月に公布された法改正で導入が決まった制度で、2028年6月までに施行される見込みです。一般貨物自動車運送事業の許可は5年ごとの更新制へ移行し、これまで「取得すれば終わり」だった許可のあり方が大きく変わります。更新審査で問われるのは、日頃からの法令遵守、記録類の一元管理、経営体制と取引構造の適正性という、すでに義務化が進んでいるテーマへの地道な取り組みです。

現時点では申請様式も審査基準も公表されておらず、確定していない部分が残ります。だからこそ、正式な詳細の発表を待ってから動き出すのではなく、今のうちからできることを一つずつ積み重ねておくことが、いざという時に慌てないための最善の対策になります。まずは自社の記録体制と取引構造の現状を棚卸しすることから始めてみてはいかがでしょうか。なお、制度の最終的な内容は、必ず国土交通省の最新の公表資料でご確認ください。

※制度の詳細・施行時期・更新周期等の正確な内容は、必ず国土交通省の公式発表・最新の告示でご確認ください。

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参考・出典

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