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物流統括管理者(CLO)選任義務の対象条件とは?運送会社への影響

法規制経営戦略

2026年4月1日、改正物流効率化法(正式名称「物資の流通の効率化に関する法律」)の規制的措置が施行され、一定規模以上の荷主に「物流統括管理者(CLO)」の選任が義務づけられました。運送会社にとっては一見「荷主側の話」に見えますが、日々の取引相手である荷主の社内体制が経営レベルで変わることは、運賃交渉や取引条件の見直しにも影響してきます。そして何より、自社や取引先がこの制度の対象なのかどうかを正しく判定できていないと、想定外の義務を見落としたり、逆に不要な身構えをしてしまったりすることになります。本記事では、CLO選任義務の対象になる条件を数値基準まで踏み込んで整理し、中小の運送会社が受ける間接的な影響と、いまから進めておける準備を解説します。

物流統括管理者(CLO)とは何か

物流統括管理者(Chief Logistics Officer、CLO)とは、企業内で物流の効率化を統括する責任者として選任される、経営層に近い立場の管理者を指します。これまで物流業務は、現場の担当部署だけで完結する「オペレーションの一部」として扱われがちでしたが、CLOの選任義務は、物流を経営課題として経営層が主体的に関与する体制をつくることを狙いとしています。情報システムを統括するCIO(最高情報責任者)や、財務を統括するCFO(最高財務責任者)を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。

制度上、CLOは誰でもよいわけではありません。法律は「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者」を充てることを求めており、実質的には役員などの経営幹部から選任する必要があります。物流部長を名目上兼任させるだけでは、要件を満たさない可能性があります。

根拠となるのは、2024年の法改正で「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」から改称された物流効率化法です。この法律は段階的に施行され、まず2025年4月1日に、積載効率の向上・荷待ち時間の短縮・荷役等時間の短縮といった、すべての荷主・物流事業者を対象とする努力義務が先行して施行されました。そして2026年4月1日から、一定規模以上の事業者を「特定事業者」に指定して具体的な義務を課す規制的措置が施行されています。

CLO選任義務の対象になる事業者の条件

「一定規模以上」とは具体的にどれくらいなのか。ここが判定の中心です。基準値は政令で定められており、事業者の区分ごとに指標も数値も異なります。

荷主・連鎖化事業者は年間取扱貨物9万トン以上

CLOの選任義務が課されるのは、特定第一種荷主(主に発荷主)・特定第二種荷主(主に着荷主)・特定連鎖化事業者(コンビニ本部などのフランチャイズチェーン本部)の3区分です。いずれも指定基準は「年間の取扱貨物の重量が9万トン以上」で共通しています。制度設計の段階で示された試算では、この基準に該当するのは国内上位の約3,200社とされていました。

ここで注意したいのは、荷主かどうかは業種で決まるわけではないという点です。貨物の運送を委託する立場か、貨物を受け取る立場かという機能で判定されるため、製造業・卸売業・小売業など幅広い業種が該当し得ます。

運送会社は保有車両150台以上で特定事業者になる

物流事業者側の基準は別です。トラック運送事業者と特定第二種貨物利用運送事業者からなる「特定貨物自動車運送事業者等」は、保有車両台数150台以上が指定基準となります。倉庫業者(特定倉庫業者)は貨物の保管量70万トン以上です。試算では、運送事業者等で約790社、倉庫業者で約70社が対象と見込まれていました。

保有車両10台以下の事業者が半数以上を占めるトラック運送業界の構造を踏まえると、150台という基準に届く会社はごく一部にとどまります。中小の運送会社にとっては、まず「自社は直接の対象ではない」というのが実態に近い判定になります。

特定事業者になってもCLO選任義務を負うのは荷主・連鎖化事業者だけ

判定でもっとも誤解されやすいのがこの点です。特定事業者に指定されると、中長期計画の作成と定期報告が義務づけられますが、CLOの選任義務が課されるのは特定荷主および特定連鎖化事業者に限られます。保有車両150台以上で特定貨物自動車運送事業者等に指定された運送会社も、特定倉庫業者も、CLOを選任する義務は負いません。

区分指定の基準課される主な義務
特定第一種荷主・特定第二種荷主(主に発荷主・着荷主)年間の取扱貨物の重量 9万トン以上CLOの選任+中長期計画・定期報告
特定連鎖化事業者(フランチャイズチェーン本部)年間の取扱貨物の重量 9万トン以上CLOの選任+中長期計画・定期報告
特定貨物自動車運送事業者等(トラック運送・特定第二種貨物利用運送)保有車両台数 150台以上中長期計画・定期報告(CLO選任は対象外)
特定倉庫業者貨物の保管量 70万トン以上中長期計画・定期報告(CLO選任は対象外)

自社と取引先が対象かを判定する手順

判定は、立場の確認から順に進めると迷いません。まず自社が荷主側の機能を持つのか物流事業者側なのかを切り分け、次に該当する指標(取扱貨物の重量/保有車両台数/保管量)の前年度実績を基準値と照合します。基準以上であれば、事業所管大臣への届出が必要になり、届出を経て特定事業者として指定されます。届出や中長期計画・定期報告の提出は、e-Gov電子申請(GビズIDが必要)で行う運用です。なお、指定された事業者の一覧を国が公表する仕組みは設けられていないため、取引先が対象かどうかは、取扱規模から見当をつけるか、取引先に直接確認することになります。

荷主・連鎖化事業者 発荷主・着荷主・FC本部 運送事業者・倉庫業者 トラック・利用運送・倉庫 年間の取扱貨物の重量 9万トン以上 保有車両 150台以上 /保管量 70万トン以上 特定荷主等に指定 特定事業者に指定 CLOの選任義務あり +中長期計画・定期報告 CLOの選任義務なし 中長期計画・定期報告のみ 基準未満なら指定されない。ただし積載効率の向上・荷待ち時間の短縮などの 努力義務は、規模にかかわらずすべての荷主・物流事業者に課される
図1:CLO選任義務の対象になるかどうかの判定フロー

基準以上に該当するにもかかわらず届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合には50万円以下の罰金、CLOを選任しなかった場合には100万円以下の罰金が定められています。CLOの選任の届出を怠った場合の20万円以下の過料も別に定められており、荷主側にとっては、形式的な対応で済ませられる制度ではないということです。

なぜCLOの選任が義務づけられたのか

物流が経営課題として扱われてこなかった

多くの企業で物流は現場任せの業務であり、経営層が物流の効率化や取引先である運送会社との関係性に直接関与する機会は限られていました。運送業に根強く残る荷主優位の力関係も、こうした現場任せの構造のなかで放置されてきた側面があります。現場の担当者が「運送会社に無理を言っている」と自覚していても、それを経営層に問題提起する仕組みがなければ、構造は変わりません。

荷待ち・荷役時間の削減は現場だけでは解決できない

荷待ち・荷役時間の削減は、現場の工夫だけでは限界があり、倉庫のレイアウト変更や出荷体制の見直しといった経営レベルの投資判断が必要になる場合があります。現場の担当者だけでは決裁権限がない設備投資や人員配置の見直しも、経営幹部であるCLOであれば主導しやすくなります。

中長期の取り組みには経営層の関与が欠かせない

物流の効率化は一朝一夕に実現するものではなく、中長期的な計画に基づいて継続的に取り組む必要があります。経営層が責任を持つ体制がなければ計画倒れに終わりやすく、担当者が異動するたびに取り組みが途切れるという失敗を防ぐ狙いもあります。特定事業者に中長期計画の作成と毎年度の定期報告が課されているのも、同じ発想によるものです。

CLOに求められる役割

法令はCLOが統括管理すべき業務を具体的に列挙しています。中長期計画の作成、トラックドライバーの負荷低減と貨物の過度な集中を是正するための方針作成・体制整備、定期報告の作成、開発・調達・生産・販売・在庫・物流といった社内の関係部門間の連携体制の構築、設備投資やデジタル化・標準化に向けた計画づくり、そして調達先・納品先など関係者との連携です。運送会社の立場から見て特に関係が深いものを3つに整理すると、次のようになります。

物流効率化の中長期計画の策定・推進

自社の物流体制を中長期的にどう効率化していくかの計画を策定し、社内外の関係者を巻き込みながら実行を推進する役割です。取引先である運送会社も、この計画の対象に含まれます。

荷待ち・荷役時間削減など現場改善の統括

現場レベルでは解決が難しい荷待ち・荷役時間の削減に向けた設備投資やプロセス変更を、経営判断として推進する立場になります。ドライバーの拘束時間に直結するため、2024年問題への対応とも密接に関わります。

運送会社・協力会社との適正な取引の推進

燃料サーチャージの別建て収受や適正な運賃水準への配慮といった、運送会社との取引の在り方を見直す役割も、CLOが担うことが想定されています。

010203 中長期計画の策定・推進 荷待ち・荷役時間削減の統括 運送会社との適正取引の推進 物流効率化の計画立案と実行 設備投資等の経営判断を主導 適正運賃・取引条件の見直し
図2:物流統括管理者(CLO)に求められる3つの役割

中小運送会社が受ける間接的な影響

自社がCLO選任義務の対象になることは一般的ではないとしても、取引先の荷主がCLOを選任することで、取引の進め方そのものが変わっていきます。

荷主側の交渉窓口が経営レベルに上がる

これまで担当者ベースで対応が分かれていた運賃交渉や取引条件の見直しについて、経営レベルの窓口が明確になります。現場の担当者だけでは判断できなかった値上げ交渉も、経営幹部であるCLOが相手であれば、より本質的な議論がしやすくなる可能性があります。原価計算に基づく運賃交渉の材料を持っている会社ほど、この変化を活かしやすくなります。

荷主の中長期計画に自社の実績が組み込まれる

CLOが荷主側の物流効率化計画を策定する際、取引先である運送会社の対応力や実績が評価の対象になることも考えられます。選ばれる運送会社としての取り組みが、こうした場面でも効いてきます。逆に、変化に対応できていない会社は、荷主の新しい体制のなかで取引継続の優先順位が下がるリスクも抱えることになります。

項目CLO選任前CLO選任後
交渉窓口現場担当者ベースで対応が分散経営レベルの窓口が明確になる
荷待ち時間への対応現場任せで改善が進みにくい経営判断として改善が主導される
取引条件の透明性感覚的な運賃交渉になりがちデータに基づく交渉がしやすくなる
中長期の関係性単発の取引になりやすい荷主の中長期計画に組み込まれる可能性

運送会社が今からできる準備

準備の中心は、経営レベルの相手と対等に議論できる材料をそろえておくことです。原価計算に基づく運賃交渉の根拠を整えること、荷待ち・荷役時間を記録してデータとして残しておくこと、そして下請けに委託した運送の体制を明らかにする「実運送体制管理簿」への対応を含め、透明性のある取引体制を整えておくことが挙げられます。実運送体制管理簿は、2025年4月から元請けの運送事業者に作成が義務づけられた帳簿で、どの事業者がどの区間を実際に運んだかを記録するものです。荷主側が物流を経営課題として扱い始めるからこそ、運送会社側も数字で語れる状態にしておく必要があります。

あわせて、取引実績データの蓄積は、荷主への説明材料としてだけでなく、自社の資金調達条件を有利にする材料にもなります。日頃から荷主の担当者だけでなく、可能であれば経営層とも接点を持てる関係を築いておくことも有効です。CLOが選任された際に、すでに信頼関係のある取引先として認識されているかどうかは、今後の取引条件の見直しで小さくない差を生みます。

まとめ

物流統括管理者(CLO)の選任義務は、2026年4月1日施行の改正物流効率化法により、年間の取扱貨物の重量が9万トン以上の特定荷主・特定連鎖化事業者に課された義務です。保有車両150台以上の運送会社や保管量70万トン以上の倉庫業者は「特定事業者」として中長期計画の作成と定期報告を求められますが、CLOの選任義務までは負いません。中小の運送会社が直接の対象になることはまずないものの、取引先の荷主側で窓口と意思決定の水準が変わることで、間接的な影響が及びます。原価計算とデータ記録に基づく準備を進めておくことが、この変化を自社にとって有利に活かす鍵になります。なお、指定の運用や届出の実務は今後見直される可能性があるため、最新の内容は国土交通省の公表情報で確認してください。

荷主の経営層が物流に本気で向き合い始める時代において、運送会社側も「言われた通りに運ぶだけ」の存在から一歩進み、データと実績に基づいて対等に議論できるパートナーへと進化していくことが求められています。

※対象となる事業者の具体的な規模基準・施行時期等は、必ず国土交通省の公式情報でご確認ください。

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参考・出典

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