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改正物流法とは?2026年4月施行で運送会社に課される義務と罰則

法規制経営戦略

「改正物流法への対応は済んでいますか」と荷主から聞かれて、何をどこまで答えればよいのか迷った経験はないでしょうか。2024年問題への対応として進められてきた一連の法改正は、2025年4月と2026年4月の二段階で本格的な施行を迎え、2026年8月現在、その大半がすでに動き出しています。

やっかいなのは、「改正物流法」という一つの法律があるわけではないという点です。物流効率化法と貨物自動車運送事業法という性格の違う二つの法律が同時に改正され、さらに2025年には追加の改正法が成立しました。義務の対象者も施行日もバラバラで、「自社に何がいつから課されるのか」を把握しづらいのが実情です。

本記事では、この全体像を運送会社の目線で1枚に整理します。施行時期の一覧を軸に、誰にどの義務がかかるのか、違反するとどうなるのか、そして2028年までに何が控えているのかまでを通しで確認していきましょう。

改正物流法とは何を指すのか

一般に「改正物流法」と呼ばれているのは、2024年5月15日に公布された「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(令和6年法律第23号)を指します。この一本の法律が、性格の異なる二つの法律を同時に改正しました。

ひとつは「物流効率化法」です。正式名称は「物資の流通の効率化に関する法律」で、改正前は「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」(物流総合効率化法)と呼ばれていました。荷主を含む物流の当事者全体に、荷待ち・荷役時間の短縮や積載効率の向上を求めるのがこの法律の役割です。義務の矛先が荷主にも向いているという点が、従来の物流関連法にはなかった特徴になります。

もうひとつは「貨物自動車運送事業法」です。こちらは運送事業者を直接規律する法律で、多重下請け構造の是正と運送契約の透明化を狙って改正されました。実運送体制管理簿の作成義務や運送契約の書面交付義務は、この改正によるものです。

さらに話を複雑にしているのが、2025年6月11日に公布された「トラック適正化二法」(令和7年法律第60号・第61号)の存在です。これは2024年の改正で残された論点を追加で手当てするもので、無許可のいわゆる白トラ利用への規制、委託次数の制限、そして2028年までに導入される許可更新制などが盛り込まれました。2026年4月からは、この二法の一部もすでに施行されています。

つまり、運送会社が向き合っている「改正物流法」は、三つの法改正が時間差で重なった複合体だと捉えるのが正確です。だからこそ、まず施行時期を時間軸で並べるところから始めるのが近道になります。

施行時期の全体像

公布から施行までの流れを時系列に並べると、次のようになります。

2024年5月15日 公布 改正物流法(令和6年法律第23号)が成立・公布 2025年4月1日 施行(第一段階) 荷待ち・荷役時間の短縮など全事業者の努力義務 元請けトラック事業者の実運送体制管理簿の作成義務 運送契約の書面交付義務 2026年4月1日 施行(第二段階) 特定事業者の中長期計画・定期報告・CLO選任の義務 無許可事業者(白トラ)の利用に対する規制 委託の段階を2次までにとどめる努力義務 貨物利用運送事業者への義務の拡大 2028年6月までに 施行予定 一般貨物自動車運送事業の許可更新制(5年ごと) 適正原価を下回る運賃・料金の制限
図1:改正物流法の施行スケジュール

2026年8月現在、運送会社が「これから対応する」段階にあるのは2028年までの改正だけで、それ以外はすべて施行済みです。表にすると、次のように整理できます。

施行時期主な措置直接の対象
2025年4月1日荷待ち時間・荷役等時間の短縮、積載効率の向上(努力義務)すべての荷主・物流事業者
2025年4月1日実運送体制管理簿の作成・保存元請けのトラック事業者
2025年4月1日運送契約の書面交付トラック事業者・荷主
2026年4月1日中長期計画の作成、定期報告特定事業者(荷主・運送・倉庫)
2026年4月1日物流統括管理者(CLO)の選任特定荷主・特定連鎖化事業者
2026年4月1日無許可事業者(白トラ)の利用に対する規制荷主・元請け事業者
2026年4月1日委託の段階を2次までにとどめる(努力義務)トラック事業者・利用運送事業者
2026年4月1日書面交付・実運送体制管理簿の義務を拡大貨物利用運送事業者
2028年6月までに許可更新制、適正原価を下回る運賃・料金の制限一般貨物自動車運送事業者

誰にどの義務が課されるのか

改正の全体像を「対象者ごと」に切り直すと、それぞれの立場で何を求められているかが見えてきます。

立場課される主な義務位置づけ
すべての荷主・物流事業者荷待ち時間・荷役等時間の短縮、積載効率の向上と、その状況の把握努力義務(規模を問わない)
特定荷主・特定連鎖化事業者(年間の取扱貨物9万トン以上)中長期計画の作成、定期報告、CLOの選任義務
特定貨物自動車運送事業者等(保有車両150台以上)中長期計画の作成、定期報告義務(CLO選任は対象外)
元請けのトラック事業者・貨物利用運送事業者実運送体制管理簿の作成・保存、下請けへの書面交付義務
荷主・元請け事業者無許可事業者に運送を委託しない禁止(100万円以下の罰金、ほかに要請・勧告・公表)
すべてのトラック事業者運送契約の書面交付、荷待ち・荷役時間の記録義務

ここで押さえておきたいのが、義務の重さが「規模」で切り分けられているという構造です。中長期計画やCLO選任といった重い義務は、年間の取扱貨物9万トン以上の荷主や保有車両150台以上の運送会社といった、業界の上位に位置する事業者に限定されています。保有車両10台以下の事業者が半数以上を占めるトラック運送業界において、多くの中小運送会社は特定事業者には該当しません。

一方で、努力義務と記録・書面の義務は規模を問わず全事業者にかかります。「うちは小さいから関係ない」という理解は、この点で誤りです。とくに元請けとして下請けに運送を委託している会社は、車両台数にかかわらず実運送体制管理簿の作成義務を負います。

運送会社に直接かかる義務の概要

規模の大小にかかわらず、運送会社の日常業務に直接影響する義務を4つに絞って概観します。それぞれの実務対応は個別に踏み込む必要がありますが、まずは「何が求められているか」の輪郭を掴んでおきましょう。

荷待ち・荷役等時間の短縮と把握

2025年4月から、荷待ち時間と荷役等時間の短縮は荷主・物流事業者の努力義務になりました。あわせて、その状況を適切に把握することも求められています。物流効率化法の基本方針は「1運行あたり2時間以内」「1回の受渡しごとに1時間以内」という目標を掲げています。

なお、荷待ち・荷役の記録そのものは、貨物自動車運送事業輸送安全規則によって以前から乗務記録への記載が義務づけられている点にも注意が必要です。改正物流法とは別系統の義務なので、「新しい制度への対応」を考える前に、まず既存の記録義務を満たせているかを確認する順序が正しくなります。

実運送体制管理簿の作成

元請けとして真荷主から1件あたり1.5トン以上の運送を引き受け、それを他の運送事業者に委託した場合、どの事業者がどの区間を実際に運んだかを記録する帳簿の作成が義務づけられました。保存期間は運送を完了した日から1年間です。2025年4月からトラック事業者に、2026年4月からは貨物利用運送事業者にも義務が及んでいます。多重下請け構造の中で見えなくなっていた実運送の実態を可視化するのが狙いです。

運送契約の書面交付

口頭での運送依頼が横行してきた商慣習を改めるため、運送契約の締結時には、運送の内容や附帯業務の料金、燃料サーチャージなどの対価を記載した書面の交付が義務づけられました。書面の形式は問われず、メールや電子的な方法でも構いません。燃料サーチャージを別建てで収受するための足場としても機能する仕組みです。

委託の段階を2次までにとどめる

2026年4月から、真荷主から引き受けた運送を他の事業者に利用させる場合、委託の段階を2次までにとどめる努力義務が課されました。孫請け・ひ孫請けが積み重なるほど各段階で手数料が抜かれ、実際に運ぶ会社の手取りが痩せていく構造そのものに手を入れる措置です。義務としては努力義務にとどまりますが、実運送体制管理簿によって階層が記録される以上、実態は外部から見える状態になったという点が重要になります。

これを機に協力会社ネットワークを整理・可視化しておくと、法対応と取引管理を同じ作業でまとめて進められます。

荷主・元請けへの義務が運送会社に及ぼす影響

今回の改正でもっとも大きな変化は、運送会社が一方的に負担してきた問題の責任が、荷主と元請けにも配分されたことです。長時間の荷待ちも、多重下請けによる運賃の目減りも、これまでは荷主優位の力関係の中で「言い出せない」まま放置されてきました。制度が荷主側にも義務を課したことで、この構造に外から力が加わります。

具体的には、次のような変化が予想されます。

まず、特定荷主に指定された取引先は、毎年度の定期報告のために荷待ち・荷役の実態を数字で示さなければなりません。そのとき、正確な記録を出せる運送会社は荷主にとって「報告に必要なデータを持っている相手」になります。記録は荷主を追及するための材料であるだけでなく、荷主の義務履行を助ける材料でもあるという二面性を持っています。

次に、荷主側に物流統括管理者(CLO)が置かれたことで、運賃や取引条件の交渉相手が経営層に近い立場の人物になります。現場の担当者では決裁できなかった設備投資や取引条件の見直しが、経営判断として動き得る状態になったということです。原価計算に基づく交渉材料を持っている会社ほど、この変化を自社に有利に使えます。

そして、白トラ規制は元請けや荷主の委託先選定を慎重にさせます。無許可事業者への運送の委託は法律で禁じられ、委託した側も罰金の対象になり得るため、許可を持ち法令遵守体制が整っている運送会社の相対的な価値は上がります。法対応そのものが選ばれる運送会社の条件になりつつあるというのが、今回の改正の実務的な含意です。

違反した場合の措置と罰則

制度の設計は、いきなり罰則が飛んでくる形にはなっていません。行政指導から始まり、改善が見られない場合に段階的に重くなる仕組みです。

指導・助言 行政からの改善の働きかけ 勧告 取組が著しく不十分な場合 事業者名の公表 勧告に従わない場合 命令 正当な理由なく措置をとらない場合 罰則 命令違反は100万円以下の罰金
図2:義務に違反した場合の段階的な措置

物流効率化法に定められている主な罰則を整理すると、次のとおりです。

違反の内容罰則
特定事業者に該当するのに届出をしない、または虚偽の届出をした50万円以下の罰金
中長期計画を提出しない、定期報告をしない、または虚偽の報告をした50万円以下の罰金
物流統括管理者(CLO)を選任しなかった100万円以下の罰金
命令に違反した100万円以下の罰金
CLOの選任の届出を怠った20万円以下の過料

金額そのものは事業規模から見れば大きくないかもしれません。しかし実務上より重いのは、事業者名の公表という措置のほうです。罰金は一度払えば終わりますが、公表された事実はインターネット上に残り、荷主や取引先からの信用に直接響きます。とくに大手荷主は自社のコンプライアンス上のリスク管理として取引先の法令遵守状況を見ているため、公表は新規取引の機会そのものを失わせかねません。

なお、無許可事業者(白トラ)への委託は根拠となる法律が変わり、貨物自動車運送事業法が「何人も」無許可事業者に運送を委託してはならないと定めています。違反して委託した者には100万円以下の罰金が科され、従業者の違反については法人にも同額の罰金が科され得る両罰規定も置かれています。あわせて、荷主等が無許可営業の原因となる行為をしている疑いがあるときは国土交通大臣が是正を要請でき、疑うに足りる相当な理由があるときは勧告が行われ、勧告をしたときはその旨が公表されます。また、年間100万トン以上の利用運送を行う事業者に課された運送利用管理規程の作成・届出や運送利用管理者の選任についても、届出を怠った場合や虚偽の届出をした場合の罰則が定められています。

2028年までに控える改正

2026年8月現在、まだ施行されていない措置が二つ残っています。トラック適正化二法により、いずれも2028年6月までに施行される予定です。

ひとつは「許可更新制」です。一般貨物自動車運送事業の許可はこれまで、一度取得すれば取り消されない限り継続する仕組みでしたが、5年ごとの更新制へ移行することが決まりました。更新の審査で法令遵守状況や事業実態が確認されることになるため、日々の記録や体制整備の積み重ねが、そのまま事業継続の条件になっていきます。

もうひとつは「適正原価を下回る運賃・料金の制限」です。原価割れの運賃で受注すること自体に規制がかかる方向で、業界の底が抜けるのを防ごうという措置になります。裏を返せば、自社の原価を正確に把握できていない会社は、適正かどうかを説明できないという問題に直面します。

いずれも制度の詳細は今後の政省令やガイドラインで固まっていくため、最新の内容は国土交通省の公表情報で確認してください。ただし方向性ははっきりしています。記録し、可視化し、数字で説明できる会社だけが残るという一貫した設計思想が、2024年からの一連の改正には通底しています。

運送会社が今から着手すべきこと

一連の改正への対応を「義務だから仕方なくやる」ものとして扱うと、コストだけが積み上がります。同じ作業を経営材料の整備として位置づけ直すと、投じた手間が交渉力に変わります。着手の順序としては、次の3つを推奨します。

記録をデジタルで残す仕組みに切り替える

荷待ち・荷役の時刻、実運送の階層、契約の書面。今回の改正で求められているものは、突き詰めればすべて「記録」です。紙の日報とドライバーの記憶に頼った運用では、監査への対応も荷主との突き合わせも成り立ちません。いきなり大がかりなシステムを入れる必要はなく、コストをかけずに始める物流DXの考え方で、主要な荷主向けの運行から段階的に広げていけば十分です。

原価を把握して交渉の材料をそろえる

適正原価を下回る運賃の制限が控えていることも踏まえると、自社の原価を車両別・荷主別に把握しておく価値は年々上がっています。原価計算に基づく運賃交渉ができる状態は、法対応であると同時に収益改善の土台でもあります。

蓄積したデータを経営の説明材料にする

記録が溜まると、荷主との交渉だけでなく、金融機関に対しても自社の実力を数字で説明できるようになります。受発注データが取引の実在性を裏づけるのと同じ理屈で、運行実績や契約書面の整備は自社の信用力そのものを底上げします

まとめ

改正物流法は、2024年5月公布の改正法と2025年6月公布のトラック適正化二法が重なった複合的な制度で、2025年4月と2026年4月の二段階で本格施行されました。荷待ち・荷役時間の短縮は規模を問わない努力義務、実運送体制管理簿と運送契約の書面交付は元請け・全事業者の義務、中長期計画・定期報告・CLO選任は年間取扱貨物9万トン以上の荷主や保有車両150台以上の運送会社といった特定事業者の義務、という切り分けになっています。

違反した場合は指導・助言から勧告、事業者名の公表、命令、罰則へと段階的に重くなり、命令違反には100万円以下の罰金が定められています。金銭的な負担よりも、公表による信用への影響のほうが実務上は深刻です。

そして2028年6月までには、許可更新制と適正原価を下回る運賃・料金の制限が控えています。制度の細部は今後も更新される可能性があるため、国土交通省の最新情報を定期的に確認する習慣を持っておきましょう。

一連の改正に共通しているのは、これまで曖昧だった物流の実態を記録し、可視化させる方向性です。義務として受け身で捉えるのではなく、荷主と対等な関係を築き直す好機として使えるかどうかで、数年後の立ち位置は大きく変わってきます。

※対象事業者の規模要件・罰則の詳細は今後更新される可能性があるため、最終的には国土交通省の公式情報をご確認ください。

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参考・出典

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